2012年5月11日金曜日

スポーツ外傷 足部


 人間が走ると前足部には体重の38倍の荷重がかかります。スポーツでは、走る・飛ぶ・蹴ると足は強く大きなストレスを受け、限界を超え酷使される。そのうえ、外傷を受けやすく、治癒する前にスポーツに復帰することが多い。足のほとんどの変性疾患,外傷は多かれ少なかれスポーツによるものです。

 

1.Turf toe(ターフ トゥ)

 1中足基節間(MTP)関節の捻挫です。人工芝の上でアメリカンフットボールの選手が底の軟らかい靴を履き、母趾を過伸展して起こす。足底部の種子骨・靱帯・関節包構造に損傷を生じ、単なる捻挫から部分断裂、完全断裂や骨軟骨障害まで程度に差があります。

 軽症例ではMTP関節の足底部や足背部に圧痛があるが、可動域制限はわずかで、腫脹や内出血もない。中等症例では圧痛・腫脹・可動域制限・内出血のいずれも認めるが、不安定性はない。重症例は関節血腫や関節動揺性を認める。

 

 

 

【治療】

~整形外科~

 ギプス固定する。重症例では手術。

~当院~

 軽度のものはテーピングやステンレスの足底挿板で過伸展を防止しながら、競技を続行できそうならさせる。

 中等度のものは10日~2週間競技を止めて、底の曲がらない靴を履き必要ならば松葉杖をつかせる。

 断裂や骨折のある重症例は6週間のギプス固定。手に負えない場合は提携医療機関へ

2.種子骨障害

 陸上選手(特にランナー)に多い障害で、着地・荷重で母趾球部の疼痛を生じ、圧痛や腫脹を認める。種子骨の障害には、骨折・遷延治癒・偽関節や、過剰な運動による疲労骨折・炎症・滑液包炎・無腐性壞死・骨軟骨症がある。

 

【治療】

~整形外科~

 足底板によるMTP関節部の除圧や背屈の防止で対処する。手術になることもあるが,両側摘出すると選手としてはランニングを続けられない。

~当院~

 靴・走路・練習方法の変更の指導。

 テーピングを指導

3.強直母趾

 選手生命の長い競技に多い。長期の過負荷、微小損傷の積み重ねで起きるMTP関節の変形性関節症で、母趾MTP関節背屈荷重時に背側に疼痛を訴える。圧痛・腫脹・骨性の隆起があり、母趾側面X線写真で骨棘形成を認め、本態は変形性関節症である。踏み返し動作や蹲踞(そんきょ)で疼痛を訴え、最大背屈を強制すると疼痛が誘発される。

 

【治療】

~整形外科~

 骨棘を含めた関節の斜め部分切除,軟骨の変性が強い場合には関節固定術を行うが,競技生活の継続は困難となる。

~当院~

 保存療法にて施術を行う。

4.外反母趾

 バレエダンサーに多く、ポアントの肢位で荷重することにより生じる。バレエシューズを履く限り訴えは少ない。

 

【治療】

~整形外科~

 症状が強度であれば、骨切術といった手術となる。

~当院~

 原因となっている筋のストレッチ等を行う。

5.モートン(Morton)病(第34趾間)

 陸上選手(特にランナー)に多い中足骨骨頭部から趾にかけての疼痛で,趾神経が中足骨骨頭で押されたり中足間靱帯で絞扼(こうやく)されて起きる。圧痛は骨頭直下ではなく骨頭間にあり,趾の背屈で起こる。

 

【治療】

~整形外科~

 症状が強度であれば手術となる。第2中足骨の短縮・背屈骨切り術を行う。

~当院~

 除圧を行う。

6.中足骨骨頭部痛

 陸上選手(特にランナー)に多い第2中足骨骨頭部の疼痛で、踏み返しの際の荷重で起きる。関節炎・腱鞘炎・胼胝(たこ)など,骨頭と足底の間の軟部組織が圧迫されて起きる。第2中足骨基部が楔状骨としっかり結合しているため、第2中足骨は足底から押されてもあまり背屈せず、圧迫を受けやすい。

 

【治療】

~整形外科~

 症状が強度であれば、骨切術といった手術となる。

~当院~

 除圧を行う。

7.フライバーグ(Freiberg)


勃起不全英国のハーブ治療法

 第2Koehler病とも言われ、第2中足骨骨頭部の骨端炎,、腐性壊死であり、若い女性のスポーツ愛好家に多い。背屈強制や、踏み返し時に疼痛があるので、金属製の前足部足底板やロッカーボトム、中足骨棧で背屈を抑制する。

 

【治療】

観血的には骨頭の回転術や頚部の楔状骨切りが適応となる。

8.リスフラン(Lisfranc)靱帯損傷

 第1中足骨基部と台に楔状骨を結ぶ靱帯で、足関節底屈位で足先から外力が加わり,断裂する。Lisfranc関節部を左右から圧迫したり、第1中足骨を他動的に動かすと基部に痛みを生じる。X線写真では左右や荷重、非荷重を比べると第1・2中足骨基部間が拡大している。

 

【治療】

~整形外科~

 36週間のギプス固定か観血的な螺子固定,痛みが続く陳旧例では骨移植を併用した固定術を行う。

~当院~

 患部を固定。症状が強ければ提携の医療機関へ

9.行軍骨折

 第2中足骨に多い疲労骨折。本来は兵士の行進、とくにドイツ式の行進で多発したが、スポーツではバレエダンサーや高校野球の選手などによくみられる。第2中足骨の可動性が他の趾に比べて少ないので、足底からの圧が第2中足骨に集中し、骨幹にストレス骨折、疲労骨折を起こす。痛みや重苦感が先行し、骨折を起こす。

 

【治療】

~整形外科~

 ギプスで固定する。症状が重度の場合は手術適応。

~当院~

 約6週間の固定。安静を指導する。

 安静を指導するが、指導を無視して練習を続けたために疲労骨折を生じるので、十分な安静期間をとらずに練習に戻り、再発をくり返す例が多い。

10.ジョーンズ(Jones)骨折  

 第5中足骨骨幹の疲労骨折で,、ランナーに多い。疼痛が先行し、軽微な外力で骨折が生じ、初診時すでに仮骨や骨硬化像を見る。

【治療】

 ~整形外科~

 観血的螺子固定、痛みが続く陳旧例では骨移植を併用した固定術を行う 

 ~当院~

 6週間の固定する。スポーツ復帰を希望される患者さんには提携している医療機関へ。

11.舟状骨疲労骨折  

 ランナーや陸上競技の選手に多く、縦アーチの頂点付近に重苦感から運動痛、荷重痛など種々の症状で始まる。初期の単純X線写真では診断できず、数カ月後にはじめて骨の吸収から骨折線が判読できるようになる。したがって骨シンチグラムが診断に役立つ。

 

【治療】

~整形外科~

手術適応。痛みが続く程度であれば、骨移植を併用して固定術を行う。

~当院~

3~6週間はギプス固定。

12.有痛性外脛骨 

 外脛骨は舟状骨の内側にある副骨で後脛骨筋腱が付着する。ランナー、特に若い女性の選手に多く、内反やその肢位での外反強制で痛みを生じ、圧痛がある。後脛骨筋腱の張力による線維性結合部の損傷や炎症が原因で、線維性に結合するバンチ2型に多い。

 


にきびを悪化させる運動

【治療】

~整形外科~

 水性ステロイド剤と局麻剤の局注は効果があるが,23週おきで3回までにとどめる。これら治療を行っても,3カ月以上疼痛が続くようなら,局麻下に2mmのドリルで45回外脛骨から舟状骨に穿孔術を施行し,下腿ギプス固定を3週間行う。その後3カ月経過してもさらに疼痛が続くようなら,外脛骨の摘出術を行う。この際,後脛骨筋の切離部は舟状骨に再縫着するが前進術の必要はない。

~当院~

 運動量を減らし,後脛骨筋腱の張力を弱める高めのアーチサポート,靴の内縁が当たらない靴を処方する。

13.有痛性(os peroneum) 

 ランナーに多く,第5中足骨基部から少し中枢部に疼痛を訴える。圧痛,腫脹があり,外反位に足を保持させながら内反を矯正すると疼痛が誘発される。Os peroneumは踵骨頚部の側面から立方骨の底部の長腓骨筋腱の中にあり,母趾MTP関節の種子骨同様に,骨折から骨軟骨障害,二分種子骨まで種々の病態がある。

 

【治療】

~整形外科~

 ステロイドの局注や下腿ギプス固定による完全安静,そして最後には摘出術を行う。

~当院~

 運動量を減らし,外側ウェッジ足底板により腓骨筋腱の緊張を軽減する。

14.前足根管症候群(深腓骨神経の絞扼性神経症) 

 ランナーやバレエダンサーに多い靴による障害で、深腓骨神経が下部伸筋支帯で絞扼され,第1みずかき部に疼痛やしびれを訴える。

15.リスフラン(lisfranc)関節変形性関節症 

 高年齢のランナやジャンパーに多い足背部の疼痛で、Lisfranc関節に一致して骨性の隆起を認める。

16.衝突性外骨腫 

 外骨腫と言っても,真の腫瘍ではなく巨大な骨棘である。ジャンパーやランナー,球技の選手などに多く,足関節前面に疼痛を訴える。足関節X線写真側面像で脛骨下端前縁部に骨棘を認め,それに対向する距骨頚部背側にも骨棘の形成がある。衝突による微小骨折や関節包付着部損傷により骨棘が形成され,これがさらに衝突や損傷を助長し,骨棘が外骨腫のように大きくなる。

 

【治療】

~整形外科~

 ステロイドの局注や下腿ギプス固定による完全安静,そして最後には摘出術を行う。

~当院~

 軽度に固定する。

17.三角骨症候群  

 バレエダンサーとサッカー選手に多く,つま先でのポアントや足背でのキックで足関節後方に疼痛を訴え,足関節最大底屈を強制すると,疼痛が誘発される。足関節側面X線写真で距骨後突起の後方に三角形の副骨を認め,これが最大底屈位で脛骨後下縁と踵骨結節部背側の間に挟まれる。分離した三角骨でなく,大きく後方に突出した距骨後突起が挟まれることもある。

 

【治療】


幼児の運動失調cereberal

~整形外科~

 ステロイドの局所注射を数回試み、効果が続かないようであれば三角骨を切除する。

~当院~

 最大底屈を避ければ改善するので,ポアントとキックを制限するように固定する。

18.足根管症候群

 ランナーには踵骨枝(外側足底神経第1枝)や内側足底神経(Joggerの足)の絞扼神経症による障害が多い。踵骨枝や小趾外転筋筋枝は母趾外転筋の深部筋膜と踵骨結節部内側壁の間で圧迫される。内側足底神経も母趾外転筋の上縁・下縁で絞扼される。ランナーは外転筋や足底方形筋が発達し,足底腱膜や筋膜が微小外傷により炎症,肥厚していることも絞扼を助長する。

 

【治療】

~整形外科~

 手術する。筋膜や腱膜を切開して絞扼部を開離する。

~当院~

 除圧を行う。

19.腓骨神経,伏在神経,腓腹神経の絞扼性神経症 

 浅腓骨神経の絞扼性神経症はランナーに多い障害で、下腿外側顆部から足背に慢性の疼痛を訴える。足関節の捻挫をくり返したり,下腿の区画(コンパートメント)症候群の既往が多い。そのほか伏在神経,腓腹神経の絞扼性神経症が知られている。

20.踵骨結節部疲労骨折  

 踵骨の疲労骨折はランナーに多く,練習量が増加して1週間ほどで踵の後上方に痛みと腫れを訴える。左右からの圧迫で疼痛が生じるのが特徴的であるが,痛み始めて3週間ほど経過しないと骨折線は判読できない。軽症例では6週ほどして疼痛も軽減したころ,帯状の骨硬化像でやっと診断がつくこともある。骨シンチグラムには数日で変化が出るので早期診断に有効である。

 

【治療】

~整形外科~

 ギプスで固定する。

~当院~

 練習の中止で治癒するが、約2カ月は休まないと練習の再開で再発することがある。

21.セーバー(Sever) 

 踵骨の骨端症とされているが,本態は骨端核の骨化障害である。子供のスポーツ選手に多く,成人にはみられない。X線写真で骨端核の硬化像や分裂像を見るが,疼痛のない症例にもよくみられることから診断的意味は少ない。

 

【治療】

~整形外科~

 程度によりけりで、痛みが続くようなら手術(ドリリング)する。

~当院~

 運動量を減らすように指導。

22.アキレス腱周囲炎 


 アキレス腱周囲炎は腱炎,滑膜炎,滑液包炎の総称である。ランナー,とくにスプリンターに多く,繰り返す微小損傷や過緊張により腱炎や滑膜炎が慢性化すると滑膜は肥厚し,血管の進入を阻害し血行不全を起こす。腱が過緊張により微小断裂を繰り返すと瘢痕組織が進入して,断裂しやすくなるという。

23.足底腱膜炎  

 ランナーに多い障害で,足底腱膜の過剰な緊張や微少な断裂の繰り返しにより起こる。

 

【治療】

~当院~

 練習量の低減・走路・靴の変更・踵のクッション・MTP関節の背屈制限で対処する。

24 .腓骨筋腱脱臼(反復性)  

 外果後方の腓骨筋腱支帯が断裂し,腓骨筋腱が滑車溝から外れて外果の表面に脱臼する。スキー選手に最も多く,次いでサッカー選手に多い。整復は自然に行われるが,初期の安静,固定が不十分だと反復性脱臼に移行する。疼痛はさほどでないが,運動中に外れると脱力と疼痛が突然生じるので不安感が強い。

 

【治療】

~整形外科~

 障害が強ければ,支帯の再建や骨性制動術を行う。

~当院~

 ギプス固定。しかし再発する可能性が非常に高い。

25.距骨滑車部の骨軟骨障害  

 急性外傷としての距骨滑車の骨軟骨骨折と足関節外側靱帯損傷による足関節不安定性に基づく離断性骨軟骨炎がある。いずれも難治性の足関節捻挫として見過ごされる例が少なくない。診断は骨軟骨障害を疑えばMRIを撮影する。

 

【治療】

~整形外科~

 鏡視下手術を行う。

26.シンスプリント(過労性脛部痛)  

 下腿内側の中1/3~下1/3あたりが痛む。陸上競技の練習をはじめたばかりの時期、ランナーに多い。使い過ぎと硬い路面が関係している言われている。

 

【治療】

~当院~ 

 部活動・スポーツ活動は休止し、安静をとる。

 熱感がある時はアイシング。

 ストレッチにより、筋・腱の脛骨に対する張力を弱める。

 踵部のクッションのよい靴を履く ように指導する。

                                                                                                                                 

 

  



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